飼われてみる?って女社長に言われた日の話

「私に飼われてみる?」

よく分からない色のお酒を飲みながら彼女は笑った。

 

近所に行きつけのバーがある。バーと言ってもカジュアルなもので、2人のマスターが楽しいことしたいねと始めた小さな店。自宅から徒歩1分のそこは、在宅で仕事をする私にとって他人と関われる数少ない場所だった。そこに行けばいつも同じようなメンバーいる不思議な安心感は、所属のない私にとって居心地が良かった。

 

年齢も環境も価値観も違う人間が集まると、不思議と多くなるのは恋愛の話だった。同僚がいない私は、もっと仕事についての話をしたかったのだけど、みんなもうその手の話題には疲れているみたいで(年上が多かったからかもしれない)黙って聞くことが多かった。カウンターでお酒を飲みながら聞こえるのは、破綻した結婚生活の話、狙ってる女の子の話、2年付き合ってる彼氏の話、それともっと下衆な話も。みんな思い思いに話しては、意見を交換し合い、不幸な話もどこか嬉しそうに議題として提出していた。その光景を見るたびに、この場所に来る時点でやっぱりどこか寂しい人の集まりなんだろうな私も含めて、と思った。

 

その日は珍しく閉店後に客とマスターで、飲み直すことになっていた。すっかりアルコールが回っていた私のテンションは思い返すだけで恥ずかしいそれだった。カラオケがあるスナックのような場所で気持ち良く歌って、バカみたいに大口開けて笑っていた姿はそれはもう下品だっただろう。店で私の隣に座っていたのは10歳上の女社長だった。全てに余裕がある雰囲気の中にどこか影を感じさせる人だった。鼻が高い彼女の横顔を見て自分の鼻がちょっとだけ嫌になった。でも、バーのカウンター席で隣に座って横顔を眺める時間はちょっとだけ好きだった。

 

カラオケタイムが一通り終わると、みんながまた恋愛の話を始めた。よくもまあ飽きないですねと本音を漏らすと、そういえばあなたはどうなの?と四方八方から質問がとんできた。いつもは適当にみんなが自分の話をしたくなるようなことを並べるのに、どうやらアルコールにやられきっていた。そもそも恋愛体質じゃない、彼氏にムカつくこと多いし、男が無理になってきたかも、みたいなことを言った気がする。へー女は?なんてマスターが言った。それは試したことがないと答えた。

 

そこからどうしてそうなったかはもう覚えてないんだけど、彼女とその店のカウンターで並んでグラスを持っていた。そして、冒頭のセリフを言われた。後ろからはHYの曲を熱唱するみんなの声が響いていた。人って飼うものなのか、と不信に思いつつ頷くと、彼女は嘲笑するように喉の奥を鳴らした。少しムカついた。

 

彼女が言うには、この飼うというのは男に疲れたら甘やかしてあげるよってことらしかった。余裕がある女の気持ちは私にはちっとも理解できない。そもそも頷いた自分がどうなのかって話だけど、私は恋愛感情としての好きという感情が薄い人間だ。ただ甘やかしてもらうために人と付き合ってきたし、恋愛ができるかのように生活を送ってきた。自分を甘やかしてくれる全てを拒めない人間、否、拒まない人間なのだ。だからもちろん頷くでしょ?って彼女の態度は、私のそれをなんとなく見抜かれてしまったようで、惨めで、でもどこかワクワクした。

 

翌日は彼氏とのデートの日だった。いままで耐えてきていた彼の体育会系のノリがとてつもなく退屈に思えた。私は薄情だった。自分を甘やかしてくれる存在がほかに出来たら、目の前にいる人のことはどうでも良くなったようだった。なんの未練もなくその日に振った。そういえば昔から断捨離は得意だったなんて呑気に自分の長所を思い出しながら。

 

くたくたになってタクシーで帰宅すると、ポストにネックレスとメモが入っていた。彼女からのものだった。達筆な文字で書かれていたのは「お疲れがんばってて偉いね」と何でもないメッセージ。私はホッとしたような気持ちになり、不眠症気味だったのが嘘みたいにその日はよく寝れたんだから単純な女だ。

 

不思議な関係がどう転がっていくのか、これからのことはちっとも分からない。そもそも飼うなんて人間に使うべきじゃないし、彼女のこともそんなに知らない。でもこれからも多分わりと長い期間続いていく関係なような気がしている。このブログは私の気持ちのメモだ。誰かに読まれてもきっと分からないだろう。ただ、もし分かるなら一度飼われてみた方がいいかもしれないね。

 

ああギャルに救われたい

 

ギャルに救われたいって唐突に思った。

 

最近何をしていてもしっくり来ない。仕事をしている時も、ごはんを食べている時も、走っている時も、寝ている時も、映画を観ている時も、大好きなお酒を飲んでいる時も、全部がどうしようもなくしっくり来ない。

 

これはどうしたことかと、ただ、ぼーっとお酒を飲む日を作ってみたら「ギャルに救われたい」って感情が突然、突如、何の前触れもなく、心のド真ん中にドでかくド派手にテッテレー!みたいな陽気なBGM付きで登場した。それが妙にしっくり来た。いまさら録画してた中学聖日記を流し見してた時。有村架純の「黒岩君が好き」ってセリフが流れてて、思わず、マジでかわいいって口に出したすぐあと。この数ヶ月で初めてしっくりくる存在が「ギャルに救われたい」って感情だった。どうやら、かわいいには脳を活性化させる作用があるらしい。かわいいの副作用すさまじいわ……。古今東西かわいい女を巡って争いとか起こるもんね……。でも今の私はかわいいじゃ救われない、ギャルに救われたい。

 

ギャルとの関わりをさかのぼれば、小学生の時が初めましてだったような気がする。私は、『りぼん』で連載されていた『GALS!』って漫画が好きだった。当時、クラスの友達と話す時は『なかよし』派気取ってたけど、思い返してみると『りぼん』で連載されてた漫画の方が好きだった。大人に見られたかったから『なかよし』派ぶってたんだと思うんだけど、実際に大人になると自己プロデュースの方向性おもろってなるよね。それだけじゃ大した違いもないのに、たったそれだけのことで何かを誇示していたんだと思う。でも、「なかよし派?りぼん派?」が高校生になってからは「好きな音楽は?」になって、もう少し経ってからは「好きな作家は?」になって、答えにどれだけ創意工夫あるかで判断されているような怖さを感じていたから、私なんていつまで経ってもそんなことでビクビクとしてしまう人間なのだと思うのだけど。

 

話は逸れたけど、『GALS!』ね。お察しの通り登場人物は全員ギャルです。渋谷のカリスマギャル・寿蘭ちゃんが送る、青春熱血ストーリー(?)。いま見る、寿蘭って字面マジですごいと思わない?ギャルを中国人に説明する時に使おうなって感じ。Wekipediaから引用した寿蘭の説明も強いよね。星座、要る?って思ったけど、やっぱりギャルって星座占いとかで一喜一憂してて欲しいもんね。要るね。

 

警官一家の長女(第2子)で、鳳南(ほうなん)高校に在学。「渋谷最強のギャル」とその名が知れたカリスマ女子高生。星座は射手座。

 

小学生のころの私には、この漫画は絵本みたいなものだったんだよね。周りにギャルがいなかったから、この漫画の中だけのファンタジーみたいな存在だったんだと思う。渋谷最強のギャルって響きに親しみがなくて、だから好きだった。寿蘭の周りの評判に負けない姿がかっこよく見えていたんだろうなあと思う。誰に何を言われようと、好きな派手髪を貫くし、好きなように生き方を選ぶ。いつも自分が好きな自分でいれるように努める。子どもながらに好きな自分でいることの難しさを感じていたから、そういうのいいなって思ってた。たぶんギャルに憧れてた。その精神の在り方が好きだった。でも、別に金髪に赤のメッシュ入れて、ミニスカートにして、放課後は渋谷に集まって、家族と友達と彼氏が何より大切ってライフスタイルが好みかって言われたそれは全然そうじゃない。どちらかと言えば、髪は抑え目で、露出は少なくて、落ち着いた街で遊んで、一人の時間を大切にしてって方が好きだけど、自分のことを好きでいれてる様子がキラキラして見えたのかな。小学生の時は流石にそうはなれなかったけど、中学生の時には形から入ってギャルっぽい恰好とか、振る舞いとかしてみた時期もあったくらいにはその憧れは強かった。結局精神的な意味ではなれなかったけど、なれないからこそ憧れてたんだと思う。

 

そうしてギャルは憧れであってなれる存在じゃないのだと悟って高校生になった私に、ああこの子は寿蘭だって思う友だちが出来た。顔が抜群にかわいくてモデルをやるような子。明るくて少しバカで、でも憎めない愛嬌があって、強くて優しくてみんなから愛される子。私はその子と一緒にいる時、ひだまりの中にいるような気分になっていた。顔とか明るさとか優しさとか、そういうところじゃなくて、ただ一点自分に素直な様子に心底安心していたんだと思う。その子はいつも身に着けたい物だけを身に着けて、言いたいことをストレートに言って、笑いたい時に誰よりも笑って、泣きたい時に大声で泣いていたから。穏やかな子じゃなかったけど、いつも素直だったから。普通じゃんって言われたらそうなのかもしれないけど、私はそう出来なかったから他の誰かがそうしてくれているのが、まるで自分の代わりかのように思えてホッとしていたんだと思う。つまるところ、自己投影して救われていた。

 

で、そんなある日。その子が「◯◯は人の気持ちを考えられるとこがいいところだよ」と私に言ったことがあった。なんの脈絡もなく急に出てきたその言葉を受けて、頭がカッとなって血がのぼっていったような感覚を今でも覚えてる。何か返事をしなきゃと働かせる頭は血液がぐるぐる目まぐるしい速さで回ってジャンク品だったし、口も砂漠みたいにパサパサに乾いてしまっていて、結局は喉の奥を揺らすみたく笑うことしか出来なかった。その日は、やっぱりなって思いながら、どこか悔しいような奥歯をギリリと音を立てていた。そんな日だった。急になんのこっちゃ?って感じだと思うんだけど、ギャルに敵わないって心底思った日だったって話。ギャルに憧れて、ギャルになりたくて、ギャルと友達になって、辿り着いたのが「ギャルへの敗北感」だったのなんか残念だったよね当時の私。

 

って、そんな子ども時代に感じていた感情を、突然思い出したのが今日だった。いつからこの感情を忘れていたのか覚えていないけど、急に、まるで本当はずっとそこにあったかのごとくハッキリとした輪郭と手触りと存在感を持って私の中に現れたの今日。その勢いで自分語りみたいな2000年のインターネットみたいな語りもしてしまった気がするんだけど、もしかしたら私は文章の中でだけはギャルになれるのかもしれないと今書きながら思った。正直、酔った勢いで何も考えずに書き始めたからオチも何もないんだけど、流れも考えずに文章を書いていたら、寿蘭や高校の友だちのような素直さがどこからか湧いてきてビックリしたって話。幼少期からずっと憧憬を抱いていた、届かなかった素直さ、つまり私の思う”ギャル”を手に入れられたのが、今って話。なんか書きたいこと違った気もするんだけどもう眠い。なんというか今なら「ありがとう」的なこと例の友だちに返せる気がする。ああ、なんか、自分の中のギャルに救われてる気がする。ああ、ギャル最高。出来るならもう一回ギャルと友達になりたい。DMくれ。

染野里奈さんが大好きだった話を3週間かけて書いた


2017年12月31日
大好きで仕方のなかった推しメンが、私がみたことのない顔で笑っていた。
穏やかに、優しく、言葉より雄弁な笑顔を残してステージを去っていった。
ぽかりと自分に穴が空いた。

 

原宿駅前パーティーズというグループに私の大好きな子は所属していた。
名前の通り原宿駅前に100人キャパの専用劇場を構えるアイドルグループ。劇場オープン当初は毎週末行われる公演チケットの当選倍率40倍と、そりゃぁもう勢いのあるグループだったらしい。らしい、というのも私が初めてそこに足を運んだのはオープンから約2年後。2017年6月18日のことだったからだ。

 

その日は前々から親交の深かった友人から「一度来て欲しい」と誘われてそこに向かっていた。正直まったく興味がなかったし、当時やっていた仕事がそっち系だったので役立てばいいなくらいの軽い気持ちで観るつもりだった。………開始3秒で恋をした。

恋という表現だと語弊がある気もするけど、その子から目が離せなくなった。目が合うとピリッと電流が走るような、そんな緊張感をまとう子だと思った。かと思えばMCでは気さくな飾らない姿を見せて、屈託なく笑う子で。そのアンバランスさが不思議だと思った。なによりもどこか何かを持て余している様子が美しい人だと思った。推しだった。

 

気付いたら次の週も、またその次の月も私は毎週末のように原宿にいた。完全に原宿に呼ばれていた。いや、呼ばれてはないけど、原宿が冷蔵庫だとしたら私は水道屋のマグネットだったくらいにはそこに毎週いた。

通えば通うほど、見れば見るほどにその美しく可愛らしい外見を愛でたくなったし、踊ってる様子にワクワクしたし、一つ一つの所作に何度も息を飲んだ。メンバー同士の会話の中で見つける優しさやサッパリしたとこすら超ド級に私のツボだった。

劇場に通い始めて2ヶ月が経とうとしていた。

少しずつ、一見クールに見えるその子が楽しそうにしている姿を目にする機会が増えて、それが見れた日はたまらなく嬉しくなって、私は宝物みたいにその瞬間を閉じ込めては反芻した。

その子が原駅内で所属している「原駅ステージA」というグループの単独公演の時、MCでメンバーと話している時、ファッションショーのお題(原駅の公演中にあるお題に大喜利で返すみたいなコーナー)で客にウケた時、ダンスナンバーを踊り終わった時。

その子は大きな目を線にして、大きな口を目一杯開けて、笑っていた。

笑顔がとってもかわいい人だった。人懐っこく屈託無く、愛されるために必要な全てが詰まった笑い方をしていた。きれいな造形をクシャリと音を立てるように崩す姿を見ていると、こっちまでたまらなく嬉しくなって、優しい気持ちになって、その感情の心地よさにいつだって助けられていた。どうしようもなく尊かった。

 

そうやって好きなところを少しずつ見つけていって、その子を更新させていって、生活の一部のように感じるようになった。必然的に劇場に通う回数も増えて、そこでの友人も増えて、その子や原駅について話す時間や考える時間が増えていった。

 

4ヶ月目。その子の生誕公演があった。

その子のためにメンバーが飾り付けた劇場、いつもよりビシっと決めているように見えたステージング、あまり聞いたことのない実家の話をした1人MC、今でもこの公演は私にとって特別で、鮮明に覚えてることが多い。
メンバーの顔、ファンの顔、その日の空気感、全てが愛おしい空間だった。とても愛されてる子なんだなって思った日だった。

同時に賢くて優しい子だと思ったのもこの日。
その子がサプライズで同じグループのメンバー1人ずつに手紙を書いてきて読み上げたんだけど、その1人ひとりに寄り添うような内容にとても驚かされた。
メンバーそれぞれが大切にしている姿勢や努力をやわらかい言葉で綴り、その反面抱える不安を優しく包みこみ、重くなりすぎないように小ネタを挟み、感謝を丁寧に述べたその手紙。
メンバーはもちろん私すら涙をこぼした。
暖かい子だと思った。心地よい温度感で他人に寄り添う子だと思った。
手紙にある言葉のチョイスや文章の構成も良くてね、 その知的さにも心が揺れた。
あまり語りたがらないその子の輪郭がぼんやりと見えてきたような気がした。好きが募っていった。

 

って、こんな風に書いていったらキリがないくらい、毎週末その子を観ては、私はその一挙手一投足に思いを馳せて、その1つひとつを大切に思っていた。

バラエティ番組に出てたくさんのタレントに囲まれて表情がぎこちなかったこと、がんばれがんばれと親みたいな姿勢で観たこと。

劇場を飛び出して大きなステージに立っても存在感を失わなかったこと、そこで初めて遠くから観た彼女の頭身がきれいで好きなのを知ったこと。
MCでまとめ役の子が休みな時は円滑に会話が進むようにサポート役が出来ること、聞き上手な姿を見て握手したい欲がつのったこと。
遅刻した罰でモノマネ10連発やらされていたこと、そのモノマネが意外に上手くて手を叩いて笑ったこと。
大学生なのに普段2000円しか持ち歩かないこと、形が特徴的な可愛い私服を着ること、意外に読書が好きなこと、ノリがいいこと、ちょっと不器用なこと、いじられて顔を真っ赤にすること、顔をくしゃくしゃにして泣くこと、リップの色が変わっていたこと、些細なことも、大したことないことも、全部きっとその子だから特別に思えた。

 

いつのまにか半年の月日が流れていた。

 

クリスマス公演に年末公演、普段とは違う公演で目白押しな12月。賑やかな街の様子と比例するように劇場もまた装いを変えていて、私はどこか浮かれたままそこに通っていた。

 その月の後半に訪れたその子の変化は唐突だった。
髪型のバリエーションが増えて、SNSをあげる回数が増えて、笑顔が増えて、目がよく合うようになった。最初に感じていた何かを持て余すような雰囲気がどんどん薄まっていっていたように感じた。
浮かれたままの私にとってはそのどれもが単純に嬉しいことで、ただただ跳ねるように喜んで、笑っていた。だって嬉しかった、ちゃんとその子がここにいる感じがした。今年この子と出会えて良かったって心底思った。だって観ているだけで幸せだった、半年間で一番穏やかな気持ちだった。

 

終わりに気がついたのは前日のことだった。

本当に理解しがたいし、これだけは文句しかないのだけど、原駅ってグループには卒業発表という類いのものがない。気づいたらそこにいなくて、気づいたら契約終了のお知らせが事務的に、劇場の休演情報やグッズの紹介みたいに何でもないことのように載るだけだ。

だから察するしか、感じ取るしか私たちにはなくて、前日に気がついた時には気持ちの整理も何もなくて、ただただこれから訪れる喪失感の影から逃げるように友人と咽び泣いていた。

 

当日、泣きそうな顔をして口をひん曲げて観る私と、去るにしてはあまりにも穏やかなその子の対比はなんだか喜劇じみていた。

その子はただただキラキラしていた。今までで一番大好きだと思える笑顔で手を振っていた。その子が手を伸ばすだけで、視線を動かすだけで、そこに立っているだけで、どうしようもなく華があった。私はやっぱりその様子に魅せられていた。

その子がいなくなっちゃうことが辛いのに、その存在にまた救われていて、どこまでもどうしようもなかった。このまま時間が止まってしまえばいいのにって何度も何度も思った。でも、合いすぎなくらい合うその子の目がこれが最後だと語っていて、握手も何もしたことのないその子と初めて会話をしたような気がして、皮肉だと思う前に嬉しかったんだから本当になんかもうオタクだった。最後の最後まで見たことのない笑顔で何度も何度も大きく手を振って、その子はそこを去っていった。

 

その様子が、あの笑顔が、今でも忘れられない。

 

たった半年だった。活動開始から2年半以上経過していたその子のたった半年。それしか私は観ていなかった。ほかの人みたいに握手もしたことがないし、劇場外のステージでその子を観たことはたった2回しかない。生誕も特別な公演も多くて1回しか観ることがなかった。

でもこれだけは結構自信があって、ちゃんと好きだった。

 

まだ観ていたかった。知らないこと、知りたいことがまだまだたくさんあった。バカみたいなリプもまだまだ送りつけたかったし、一瞥されただけで喜んだり、髪型が変わっただけで嬉しくなったり、ただただかわいいって思ったり、ダンスで好きな場所見つけたり、ファッションショーのお題やMCで見せる面白さに大声出して笑いたかった。

 

そんな風に何度も繰り返し思っては打ちひしがれて、年明け5日くらいはそれはもう絶望的な気分だった。年越しなんて上手く出来るわけもなく、世間から置いて行かれたような気がしていた。

 

でもあの最後の笑顔を思い出す度に、これが最良の選択だったんだろうと思うしかなかった。だってなんか、思い残すことがなさそうだった。悔しいくらいに清々しくて、穏やかで、優しくて、全然違うのかもしれないけど、少なくとも私にはそういう笑顔に見えた。悲しいとか寂しいとかって気持ちを飛び越えて、おつかれさまって気持ちが勝ってしまった。そう思った頃にはもう、その子がいない現実を受け入れる心構えが出来てしまっていたんだと思う。

 

 


そしてもう少しであの子が見れなくなってから1ヶ月。


どうにか染野さんへの気持ちを言葉にして吐き出さないとずっと暗いままだ、とこのブログを5日から毎日少しずつ書いてきてもう24日。ここまで書くのに3週間も要したのウケるよね。長い期間かけて書きすぎて気持ちの波があるので、語り口や言い分などまとまりがないし重複もしているだろうけど、もうほぼ闘病日記に近いものなのでそれでいいのかなって思ってる。

こうして振り返ってみると瞬きの間みたく、あっという間だった。毎日毎日、楽しかったし嬉しかったしハッピーだった。染野さんを観ている間ずっと、私は何かとてつもない奇跡みたいなものを見せられている気分だった。それだけでたぶんもう幸せだったと今は思ってる。だって出会えて良かったってめっちゃ思うし、画像とか動画とか見ると、嘘だろ!この世の奇跡か!?かわいすぎ!すきぃ〜〜♡♡♡壁画に彫って後世に残さなきゃ!!って気に今でも全然なるよ。そもそも勝手に異常に好きだっただけだし、これからも勝手に好きでいるんだと思う。

なんか、そこに推しがいなくなっても 私が染野さんを好きなことはもはや生活であり習慣なんだよね。だから世界が回転するように、朝と夜が来るように、当たり前のように更新されていくんだろうなと思う。


染野さんもまた彼女が選んだ人生を、私が見れない場所で当たり前のように更新させていくんだろうなと思う。

 


と、いうことで毎日笑って幸せにいてください推しメン!!!一般人でも芸能人でも宇宙人でも、染野さんが笑ってられる未来を選んでるなら最高に幸せです!!!心の中の応援団総動員でひっそり応援してます!!!
そりゃぁもう散々と痛くてキモいこと長々と書いた自覚はあるけど、染野さんがくれた時間とか感情とか、そういうのやっぱり1ヶ月が経とうとしている今も、たぶんこの先も大切なものなんだよ。謎にハッピーエンド的な気持ちになってるので、これくらいは許してほしい。

あー!4800字書いた今気付いたけど、結局言いたいこと染野里奈さんが大好きですだけっぽい!!!

HKT48「本気のアイドルを見せてやる」ツアー前橋公演

 

誘われて行ったHKT48春の関東ツアー@前橋で思ったことをメモっとく。見直さないのでほんとメモ。いいライブだった。

 

 

HKT48はアイドルであることから目をそらさない、逃げないグループだった。 

序盤からキラーチューンを次々に披露してオーディエンスから「楽しい」って気持ち以外をほとんど強引に奪って、その上でステージ上にいる本人たちが誰よりも楽しそうにはしゃいでいたのが印象的なライブだった。 

絶対にみんなが盛り上がる曲ばかりやり続けるから、いつまでたっても休む暇がなくて。常に「次はどんな曲をどんなメンバーが披露してくれるんだろう?」ってワクワクさせられていて。ジェットコースターにずーっと乗っているような気分になった。本当にどうしようもないくらいに楽しくない時間が存在しないライブだったなあ〜!本当に!

 

中盤くらいにアイドルメドレーと称して、娘。や欅坂やももクロや48グループの曲をぶっ続けでやったんだけど、それがもう本当に最高だった。HKTは自分たち以外の曲をやることに抵抗がないグループなんだなと思った。

 

なんかさ…流行りの曲を取り入れるっていうと「手っ取り早く盛り上がりを作れるし簡単じゃん」って、「自分たちの曲じゃ盛り上がりを作れないから他人頼りかよ」ってもしかしたら思われるかもしれないけど。それって実はすごく難しいことだと思うんだよ。そういうのを取り入れるという選択は、自分たちらしさ、グループらしさを見失う可能性もはらんでいるわけだから。

だって自前の曲が一番グループカラーを現しているのに、限られたライブの時間の中で他人の曲なんて安易にやったら、「結局このグループってどういうグループなの?」ってなっちゃうと思う。

でも!違うんだよ。そうじゃないんだよ。彼女たち(あるいは運営、指原さん)の中にあるHKTらしさっていうのは、誰の曲をやろうとも崩れない部分にあるんだと思った。「人を笑顔にさせること」それがHKTのグループカラーなんだと気づいた。

だから安易でもなんでもなくて、あの日わたしは、みんなが楽しめて笑顔になれるものを提供するために「計算しつくされたセットリスト」だったなと感じた。人を笑顔にしたいことがベースにあるから、ある意味では他人の曲を選ぶこと自体がHKTらしさなんだと思った。しかもさ、他人の曲をやろうともそれがちゃんとHKT色に染まってるから、見てる側からしても違和感がないのがすごいんだよ。この曲はやっぱ本家の方がいいとか、そういうところに感情がいかないというか、ちゃんと「楽しい」に感情を誘導してくれてる感じがしたんだよね。

 

そうなったのはやっぱりメンバーの力が大きいと思う。楽曲の力については前述したけど、こうやってHKTらしさを作り出せるのはメンバーあってこそだと思った。というのも、私はこんなに全員が笑顔を絶やさないライブを見たことがなかった。ぶっちゃけファンよりメンバーの方が100倍楽しそうに見えちゃったくらいで。本当に楽しみ方を知っているメンバーというか、人を笑顔にしたいならまずは自分が心の底から笑えっていうことを知っているメンバーだたちなんだよね。ステージにそういう人たちがいるから、余計な感情を取っ払ってこっちも見れるし、楽しくなる。自然に口角が上がって、かかとが軽快にビートを刻んで、喉が開いて、自分が何者かとかそんなことも忘れて。ただただ、ここにいる間は楽しんでる人が優勝って気になる。

もちろん自分たちの、HKT楽曲のステージも最高に良くて。っていうか、やっぱり最高潮に盛り上がっていたと思えたアイドルメドレーを越えてくるからビックリだった。自分たちの曲だけでこんなに楽しませられるのに、そこはあえて捨ててその先を目指しているんだなって思った。本当に底なしのエンターテイメント。

 

そんなライブを思い返している中で、ふとHKTが今回のツアーで掲げている「本気のアイドルを見せてやる」というテーマを思い出した。前述した「人を笑顔にする」というHKTらしさって、実はアイドルの根本と同じなんだと気づいた時、ストンと自分の中で何かが収まった気がした。

今はいろんなアイドルがいるからその意味、範囲は多種多様だけど、どんなアイドルもみんな誰かを勇気づけて笑顔にさせているとは思うんだ。たまたまその笑顔にするアプローチ方が違うだけで、もとを辿ればそこに行き着くんじゃないかなって思うんだよね。

で、HKTはそこに対して真っ向から向かっていってるんじゃないかなって。誰かを笑顔にすることに真正面から向かうこと、それがHKTらしい「本気のアイドルの見せ方」だったんじゃないかなって。

思い返してみればアイドルメドレーではいろんなタイプのアイドルの曲をやって、その最後に小泉今日子の『なんてったってアイドル』を全員で歌ってたんだよね。超ド直球に、人に勇気や癒しや笑顔を与えるようなアイドル全盛期の曲を。やっぱりこれがHKTのアイドルへの答えなんだと思った。

 

そう思ってみたら物販ロビーにはメンバー全員が昭和アイドルに扮したポスターや、お祭りのようなブース、顔ハメパネルや4期生のラジオブース。この場所に足を踏み入れた時からずっと、分かりやすく誰かの笑顔を作る仕掛けであふれていたんだよね。最初からずっとワクワクさせられていたんだって気がついた。

 

https://twitter.com/dmg3m/status/835525306660204546

ライブ終盤になるにつれメンバーがへろへろになっていってそれでも笑顔の輝きが増していく姿がああHKTはこういうグループなんだって感じだった 頬が赤く染まってって息が速くなっていって前髪が汗で束を作り始めて 完璧に作った状態が崩れていってもキラキラが増してくの「アイドル」だった。

 

私はあの日「アイドルなのに」こんなことをやるって、そんな謳い文句ばかりが並ぶいまの時代に「アイドルだから」出来ることを真っ向からやっているグループに出会ってしまった気がする。その姿がもう本当にかっこよくて、私がアイドルを好きな根幹を突かれた気がして。今回のライブでよりHKT48大好きになった。ああ〜最高だ。

 

 

以下当日のツイートまとめ

 

https://twitter.com/dmg3m/status/835507110917988352

 

https://twitter.com/dmg3m/status/835529228435116032